船舶所有法人は外国漁船員に対する国内源泉所得の支払者
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/26/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 国内法人が所有する船舶に乗船している外国人漁船員の配乗等に関する業務を行った法人に対して支払った金員が源泉徴収義務の対象になるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(杉原則彦裁判長)は外国漁船員が配乗等の勤務についていた当時、雇用の上、各船舶に乗船させていたと認めるのが相当と認定、非居住者に対する国内源泉所得の支払いに該当すると判示して、船舶会社側の納税告知処分の取消しを求める請求を棄却した。

 この事件は、原告法人が所有して運行する船舶に乗船している外国人漁船員の配乗等に関する業務を行った外国法人に支払った金員の一部は、原告法人が雇用する外国人漁船員の人的労務の提供の対価に当たり、非居住者に対する国内源泉所得の支払者に該当すると認定、原処分庁が源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴していたもの。

 当然ながら、原告法人側は外国漁船員との間に雇用関係はなく、国内源泉所得の支払者に該当しないこと、かつ外国人漁船員は非居住者に該当しないと主張して原処分の取消しを求めていた。つまり、原告法人と外国人漁船員らの間に雇用関係があるか、外国漁船員が非居住者に該当するか、さらに原告法人らが国内源泉所得の支払者に該当するか否かが争点になっていたという事案だ。

 これに対して判決は、原告法人らが船員労働行政上の枠組みに従って、外国人漁船員らを自ら直接雇用して各船舶に乗船させていることを示す種々の行動をしていたとともに、外国法人を介して外国人漁船員らに金員を支払っていたと認定。また、雇用契約に基づき金員の支払義務を自ら負っているから、国内源泉所得の支払者に該当するとも認定。さらに、船舶は乗組員の勤務場所に過ぎず、外国漁船員の居所とはなり得ないと指摘して原告法人らの取消請求を悉く斥けている。

(2010.02.22 東京地裁判決、平成18年(行ウ)第651号等)