優先的施設利用権がないため資産の譲渡には該当しないと判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:05/26/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 預託金会員制のゴルフクラブ会員権の譲渡が、資産の譲渡に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(八木一洋裁判長)は、優先的施設利用権に係る債務の履行が不能となった後に、新たなゴルフ場運営者に利用を請求できる権利を有すると認める根拠がないことを理由に、資産の譲渡には該当しないと判示、棄却した。

 この事件は、預託金会員制のゴルフクラブ会員権を有していた者が会員権を譲渡した結果、譲渡損失が生じたとして損益通算の上、確定申告したのが発端。しかし原処分庁が、優先的施設利用権の存しない預託金返還請求権(つまり金銭債権の譲渡)であるから資産の譲渡には該当しないとして損益通算を否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側がその取消しを求めて提訴した事案だ。

 通常、預託金会員制ゴルフ会員権の譲渡は譲渡所得となるが、設備の優先的利用権、年会費納入義務、預託金返還請求権等の権利義務関係が一体となったものが前提になる。この事案の場合、預託方式によって別のゴルフ場運営会社に運営を委託し、多額の債務を抱えるゴルフ場経営会社が、債権者にゴルフ場敷地で代物弁済する旨を和解した後、運営会社が債権者側とゴルフ場敷地の賃貸借契約を締結、新たな権限で運営を開始したという事情があった。

 判決は、和解成立後、運営を受託したゴルフ場運営会社が新たに運営を開始した時点で、元のゴルフ場経営会社は個人正会員等に負うコルフ場の優先的施設利用権に係る債務の履行が不能になったと認定。その債務不履行後に、会員権を有する者が、新しい運営会社への移行手続きを経ることなく、新たに不動産の所有者となった債権者又は新たなゴルフ場運営会社に対し、ゴルフ場の利用を請求することができる権限を有すると認めるべき根拠も見当たらないとも指摘した。

 結局、優先的施設利用権に係る債務が履行不能となった後に譲渡されたものであり、ゴルフ場の利用を請求し、利用することができたとも認められないと判示、棄却した。

(2014.07.09東京地裁判決、平成25年(行ウ)第1、2号)