非居住者の譲渡対価に係る源泉徴収制度は合憲と判断、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/29/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産の譲渡が非居住者に対するものとして、不動産の購入者側に源泉徴収義務があるか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)は非居住者であるか否かの判断に何ら問題はなく、非居住者の土地等の譲渡対価に係る源泉徴収制度を定めた所得税法は憲法にも違反しないと判断、不動産の購入者である原告の主張を棄却した。

 この事件は、不動産の購入契約を締結して代金決済と所有権移転登記手続をしたところ、原処分庁が、譲渡者を所得税法上の非居住者に該当することから売買契約に係る譲渡対価は国内源泉所得に当たると認定、購入者である原告は源泉徴収義務を負うとして源泉所得税の納税告知処分をしてきたため、原告がその取消しを求めて提訴していたもの。

 原告側は源泉徴収義務を定めた所得税法等は憲法29条1項、3項等に違反し、限定的に適用すべきであるから源泉徴収義務を負うことはなく、仮に源泉徴収義務が生じたとしても譲渡者の納税義務は消滅しているはずであるから源泉徴収義務はないと主張していた。

 これに対して判決は、非居住者との不動産等の譲渡に係る源泉徴収制度(所法212(1))は非居住者等である譲渡者が、確定申告期限前に売買代金を国外送金して出国してしまう問題を解決するために創設されたものと解釈。その上で、非居住者等の不動産等の譲渡対価に係る源泉徴収制度には原告が主張するような憲法29条1項、3項違反はなく、もとより、これを制限的に適用しなければ憲法29条1項、3項に違反するとも言えないと判示。結局、不動産の譲渡者が所得税法上の「非居住者」に当たることに争いはないから、不動産を購入した原告はその譲渡対価に係る源泉徴収義務を負うと指摘して、原告側の主張を斥けている。

(2011.03.04 東京地裁判決、平成21年(行ウ)第121号)