常時勤務には該当しないため、役員報酬は国内源泉所得と判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/12/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 国外勤務の役員に支払った報酬が国内源泉所得に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は常時使用人として勤務しているとは認められないことを理由に国内源泉所得に該当すると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、取締役が国外で使用人として常時勤務をしていたとは認められないという判断から、支払われた役員報酬は取締役が国外で行った勤務に基因して支払われた国内源泉所得に該当するとして原処分庁が源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等をしたのが発端。そこで審査請求人が、取締役は国外で使用人として常時勤務していたのであるから、役員報酬は国内源泉所得に該当しないと主張して原処分の取消しを求めた事案である。

 つまり、取締役が国外で行う勤務が所得税法施行令285条1項1号に規定する使用人として常時勤務を行う場合に該当するか、その結果、役員報酬が国内源泉所得に該当するか否かが争点になった事案だが、請求人は取締役が海外で使用人としての職務である海外営業本部長等として勤務しており、使用人として常時勤務する場合に該当するから、役員報酬は国内源泉所得には該当しない旨主張して原処分の取消しを求めていた。

 しかし裁決は、国内の取締役会や経営執行会議への出席など国内業務に基因する部分は所得税法第161条8号イに規定する国内源泉所得に該当することが明らかと指摘。また、取締役が海外子会社の社長として勤務していたものの、子会社の社長としての勤務は使用人勤務に当たらないことも明らかであり、国外における法人の実態、取締役の実質上の地位、役割、職務の内容等をも併せ考えると、国外の勤務は経営判断等の職務に関するもので役員としての勤務と認めるのが相当であることから、その勤務内容は「使用人として常時勤務する場合」には該当しないと判断した。結局、取締役に対する役員報酬は国内源泉所得に該当すると判断して審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2012.05.10裁決)