外国に在留中は日本国内に生活の本拠はなかったと認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/10/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 日本国籍のない審査請求人が海外在留中に得た報酬をめぐって、居住者か非居住者かの判定が争われた事案で国税不服審判所は、請求人が報酬を得ていた期間は国内に生活の本拠がなかったと認定して原処分を全部取り消した。

 この事案は、日本国籍を有しない請求人が外国に在留中に得た報酬をめぐって、原処分庁が外国に在留中も日本に生活の本拠を有する日本の居住者であることから、その報酬もが課税対象に当たると認定、所得税の決定処分等をしたことが発端になったもの。そこで請求人が審査請求の上、外国に在留中は日本に生活の本拠がなかったのであるから納税義務を負わないと主張して、原処分の一部取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決は、コンサルタント業務を営む請求人が外国在留当時、日本への滞在は月に1回程度の頻度、1日間から5日間に過ぎず、日本に所在する家屋は請求人の妻が勤務先から社宅として賃借していたものであることなどを考慮すると、その家屋が日本滞在中の生活拠点と認められるものの、生活の本拠がその所在地にあったと直ちに判断することはできないと判断。また、コンサルティング契約は国外の事務所で常勤の業務を提供する内容であったこと、契約期間の大部分を国外で過ごしている点等を考えると、国外でコンサルティング業務をしていたと認めるのが相当とも判断した。

 つまり、対外的に国内の家屋内に事業所を置くコンサルタントであることを理由に、直ちに職業的基盤が日本にあったと認めるのは困難という判断をしたわけだ。さらに、妻らが日本国内に居住していたことが、請求人の生活の本拠が国内にあったことを裏付ける重要な事実であるとまでは認め難いとも指摘。結局、請求人の生活の本拠が国内にあり、相当期間継続して居住していたとまで認定するのは困難であり、非居住者に該当するという判断をした。

(国税不服審判所、2009.09.10裁決)