弁護士が事務所の立退きの際に受領した金員は事業所得
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:07/09/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 弁護士が事務所の明渡しに伴い賃貸人から受領した立退料が一時所得、事業所得のいずれに該当するかの判断が争われた事件で東京地裁(八木一洋裁判長)は、旧事務所から新事務所への移転によって増加する事業所得に係る必要経費を補填する趣旨のものとして授受されていることから事業所得に該当すると判示して、弁護士側の請求を斥けた。

 この事件は、弁護士が事務所として賃借していた建物部分の明渡しに伴い、賃貸人から立退料名目の金員を取得したのが発端。そこで弁護士側は一時所得として確定申告をしたところ、原処分庁が事業所得に該当すると認定して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴されたという事案である。

 弁護士側は弁護士の事業所得となる報酬は法律相談や鑑定料、着手金、手数料、顧問料、日当等であるが、立退料はこのいずれにも該当せず、そもそも弁護士の職務とは関係のない収入であるから、事業所得と評価することは到底できないと主張して取消しを求めた。

 これに対して判決は、弁護士が受領した立退料は利子・配当・不動産・給与・退職・山林・譲渡所得のいずれにも該当しないのは明らかと指摘した上で、事業所得・一時所得のいずれに区分されるかを検討する際は事業所得該当性を判断する必要があるとも指摘。加えて、事業に係る行為等はその事業の本体を成すもののほか多様な業務を含むことから、その事業に係る事務所等の維持や管理の業務は事業所得を生ずべき業務に含まれ、それについて生じた費用は事業所得に係る必要経費に該当すると解釈した。

 結局、弁護士が受領した立退料名目の金員は事務所移転に関する明渡合意に基づくものであり、事務所の維持及び管理の業務は事業所得を生ずべき業務に含まれると解するのが相当であるから、事業所得に該当すると判示して弁護士側の請求を斥けている。

(2013.01.25 東京地裁判決、平成23年(行ウ)第736号)