課税処分取消判決の確定に伴う過納金は相続財産で確定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/09/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 被相続人の税務訴訟を承継した相続人が課税処分の取消判決の確定に伴って取得した過納金が相続財産に帰属するのか否かの判断が争われた事件で、最高裁(吉田佑紀裁判長)は控訴審と同様に被相続人の相続財産を構成し、相続税の課税対象財産になると解釈するのが相当と判示して、納税者の上告を棄却した。

 この事件は、被相続人が生前に起こした所得税の課税処分取消訴訟の地位を相続に伴って承継した相続人が、課税処分の取消判決の確定に伴って過納金を還付されたことが発端になったもので、原処分庁がこの過納金を被相続人の相続財産と認定の上、更正処分をしてきたため、相続人がその取消しを求めて提訴していた事案だ。

 一審の大分地裁は、相続人が取得する相続開始後の権利は、それが実質的に被相続人の財産を原資とするものであっても相続財産には該当しないと解釈、納税者側に軍配をあげたものの、一審判決を不服とした課税当局が控訴したところ、控訴審は確定取消判決に伴う行政処分の効果は特段の理由がない限り遡及して適用され、その行政処分は当初から無かった状態に回復されると指摘して被相続人の相続財産に含まれると判示、納税者敗訴の逆転判決を言い渡したため、納税者が控訴審判決の取消しを求めて更に上告していたわけだ。

 これに対して最高裁は、取消判決の確定に伴う過納金の還付請求権は納付の時点において既に発生していたことになると控訴審と同様に解釈。その結果、取消判決が確定した時は、過納金の還付請求権は被相続人の相続財産を構成し、相続税の課税財産になると解釈するのが相当と判示、控訴審判決を支持して納税者の上告を棄却した。

(2002.10.15 最高裁判決、平成21年(行ウ)第266号)