満期保険金から控除できる保険料は本人分のみと続けて判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/30/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 養老保険契約の保険期間の満了に伴って支払われた満期保険金額を一時所得として申告する際、本人負担分に加え法人負担分の保険料も「収入を得るために支出した金額」として控除できるか否かの判断が争われてきた事件で、最高裁(金築誠志裁判長)は16日、収入を得るために支出した金額は一時所得の所得者本人が負担した金額に限られ、それ以外の者が負担した保険料は含まれないと判示して、1月13日付けの最高裁第二小法廷判決と同様の内容の判決を言い渡している。

 ただ、この事件は先の1月13日に判決が言い渡された事件とは異なり、1審が納税者の主張を認めたものの、控訴審は法人負担分の控除を否定して医療法人の理事長の主張を棄却したため、納税者側が上告していたという事件である。また、控訴審は納税者の主たる請求を斥けたものの、納税者の解釈による申告にも正当な理由があると認定した上で、過少申告加算税については取り消されるべきである旨判示されていた点も、1月13日の事件経緯とは多少異なる内容になっていたわけだ。

 結局、最高裁はこの事件に対しても、1月13日の判決と同様に、事実関係を整理した上で、法人負担部分の保険料は所得税法34条2項の「収入を得るために支出した金額」に当たるとは言えず、保険金に係る一時所得の金額の計算の際に控除することはできないと指摘、納税者側の請求を認容した原審の判断には判決に影響を及ぼす明らかな法令違反があると判示して納税者側の上告を棄却している。

 さらに、正当な理由の有無を考慮するほどの事情もないと指摘して、過少申告加算税の賦課については控訴審で再度審理を尽くすべく差戻しを命じる結果となった。既に、平成23年度税制改正で見直しが図られているため、実務的な影響は少ないと見られているが、今回の最高裁判決で漸く決着したことになるわけだ。

(2012.01.16最高裁第一小法廷判決、平成23年(行ヒ)第104号)