譲渡されたのは契約上の地位としての旧ゴルフ会員権と判断、取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:05/21/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 ゴルフ場の事業譲渡後における旧ゴルフ場の経営会社が発行したゴルフ会員権の譲渡が資産の譲渡に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は新・旧ゴルフ場経営会社間の取決めで、譲渡時点までの間、旧ゴルフ会員権に基づくプレー権が維持されていたことなどの事実認定を踏まえ、譲渡されたゴルフ会員権は旧ゴルフ会員権であると認定するとともに資産の譲渡に該当すると判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人がゴルフ会員権の譲渡後、譲渡所得の金額の計算上損失の金額があるとして確定申告したところ、原処分庁がゴルフ会員権の譲渡は資産の譲渡に該当しないと判断した上で更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端になった事案である。

 つまり原処分庁は、請求人が旧ゴルフ場運営会社に対して有していた優先的施設利用権や預託金返還請求権などの契約上の地位は、旧運営会社から新運営会社への事業譲渡によってプレー権が消滅し、旧会員権を有する会員についてそのプレー権とは別の権利である暫定的プレー権が付与されたものであると判断したわけだ。

 これに対して裁決はまず、旧会員権の権利義務について、事業譲渡の際に1)引き続き、新ゴルフ場のプレー権や預託金返還請求権等の新会員権の地位を希望する者には、旧会員権を会員権管理会社に取得させる代わりに新会員権を付与させる、2)新会員権の取得を希望しない旧会員に対しては、旧会員権の取得及び新会員権の付与の手続きが完了するまで、新ゴルフ場の優先的施設利用の承認が取り決められたものと認定。

 その認定の下、事業譲渡の際に、新会員権の取得を希望する旧会員から会員権管理会社に譲渡されたのはプレー権及び預託金返還請求権つまり契約上の地位としての旧会員権そのものであり、旧会員権の譲渡時にプレー権の存在が前提にされていたと判断した。結局、請求人は新会員権の取得を希望し、旧運営会社のプレー権を含む契約上の地位としての旧会員権を会員権管理会社に譲渡したのであり、資産の譲渡に当たると判断して、原処分を全部取り消している。

(国税不服審判所、2012.08.02裁決)