借入金債務の免除は賞与に該当すると認定、差戻し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/02/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 社団法人の理事長等の地位に対する借入金債務の免除が賞与等に該当するか否かの判断が争われた事件で最高裁(櫻井龍子裁判長)は、原処分庁の納税告知処分を違法と判断した控訴審の判決内容には法令違反があると破棄した上で、差戻しの判決を言い渡した。

 この事件は、青果物等の買付けを主たる事業とする権利能力のない社団が、元理事長に借入金債務の免除をしたのが発端になったもので、原処分庁が債務免除は理事長への賞与と認定して源泉所得税の納税告知処分等をしてきたため社団側が提訴、その該当性が争われてきたもの。

 控訴審が債務免除の主たる理由は元理事長の資力喪失により弁済が著しく困難になったためであり、役員だったことが理由だったとも認めにくいことから、債務免除益を役員の役務の対価とみるのは相当でないと指摘して、社団法人側に源泉徴収義務は生じないと判示したため、原処分庁側がその取消しを求めて上告したという事案である。

 最高裁は、所得税法28条1項が定める給与所得等に関する解釈をした上で、元理事長に多額の金員の貸付けを繰り返したのは、理事長等の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものであり、債務免除に当たっては理事長等としての貢献度が考慮されたこともうかがわれると指摘。そうした事情を踏まえ、債務免除益は元理事長が自己の計算又は危険において独立して行った業務等により生じたものではなく、雇用契約に類する役務の提供の対価として、功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与された給与とみるのが相当と判示した。

 つまり、債務免除益は所得税法28条1項が定める賞与等の性質を有する給与に該当すると判断したわけだ。その結果、控訴審の判断には法令違反があると判示して破棄する一方で、原処分が取り消されるべきか否か更に控訴審で審理を尽くさせるため、差戻しを命じる判決を言い渡した。
 
(2015.10.08最高裁第一小法廷判決、平成26年(行ヒ)第167号)