代物弁済による貸付金の消滅利益はみなし配当と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/06/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 持株会保有の株式の代物弁済で貸付金が消滅した場合、取得株式に対応する債権のうち資本等の金額を超える部分が配当に当たるか否かの判断が争われた事件で大阪地裁(吉田徹裁判長)は、株主としての地位に基づき代物弁済によって借入金債務の消滅利益が発生していると判断、資本等の金額を上回る部分は配当に当たると判示して棄却した。

 この事件は、従業員持株会を設置している株式会社が持株会に対する貸付金の回収に当たり、持株会が所有する発行済株式の代物弁済によって貸付金を消滅させたのが発端。これに対して原処分庁が、取得株式に対応する資本等の金額を超える部分を配当と認定、源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴した事案。

 法人側は、持株会が所有する株式の代物弁済による借入金債務の消滅は、従業員の福利厚生対策の危機を救済するためのもので、資本取引としての自己株式取得ではないから、みなし配当に該当する事実関係は認められないと主張して、課税処分の取消しを求めていた。

 これに対して判決はまず、持株会の法的性格を民法上の組合と認定した上で、代物弁済による借入金債務の消滅という事実関係がある以上、代物弁済は所得税法25条1項注書き及び5号の要件を充足しており、それは代物弁済の目的如何によって左右されるものではないと指摘。また、取得対象とされた自己株式に対応する資本等の金額との間で比較の対象とすべきは株主等が交付を受けた金銭の額であり、法文上、取得対象の自己株式の時価を比較対象にみなし配当の額を計算すべきものと解釈する余地はないとも判示した。

 結局、代物弁済によって、株主としての地位に基づき借入金債務の消滅という利益が発生している以上、資本等の金額を上回る部分は配当とみるほかないと判示して棄却した。法人側は判決内容を不服として控訴している。

(2011.03.17 大阪地裁判決、平成20年(行ウ)第231号)