生活状況等の諸事情を総合的に勘案、生活の本拠は日本と判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/21/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 生活の本拠地が国内にあるのか海外にあるのか、つまり非居住者に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、国内外での滞在日数、職業及び業務の内容及び従事状況等を総合的に勘案した上で日本に居宅があったと認定、審査請求を棄却した。

 この事件は、1年間の半年近くを海外に滞在、国外の法人の取締役社長として業務を行っていた審査請求人が、その法人から受領した給与及び日本の公的年金等の各所得の確定申告をした後、国外に生活の本拠があるため非居住者に該当するという判断の下に、国内源泉所得以外の給与所得等の金額を総所得金額から減額すべきであるとして更正の請求をしたことが発端になったもの。

 これに対して原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、請求人が通知処分の全部の取消しを求めて審査請求したという事案である。つまり請求人は、取締役社長として海外に長期間滞在して海外の法人の業務に従事していたのであるから、請求人が起居していた法人のある海外の居宅が生活の本拠地である旨を主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 これに対して裁決は、請求人は1)ほぼ毎月日本に入国して半月程度又は1ヵ月程度滞在し、年間の国内滞在日数は海外の滞在日数を上回っている、2)日本の滞在中に起居していた請求人所有の居宅は日本へ入国した際の法人の業務や通院のための滞在場所であり、生計を一にする妻と家庭生活を営む唯一の場所であるのに対し、海外の居宅は海外で業務を行う都合上滞在する場所であり、国内の居宅と比べて全生活との関係は希薄である、3)妻は継続して国内の居宅に居住し住民登録地としている、さらに4)住民登録地を国内の居宅の所在地とし、公的年金等の各支払者に対して自己の住所を同所在地として届け出ているほか、5)日本国内で生活する上で有用な健康保険の被保険者の資格を保有し続けている等々の事実関係を認定。結局、これらの諸事情を総合勘案すると、客観的に生活の本拠(全生活の中心)たる実体を具備していたのは、海外の居宅ではなく日本国内の居宅であったと認定するのが相当と判断して、審査請求を棄却している。