資力喪失状態は債務免除直前の財産状況も前提になると解釈
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/05/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 総額で24億円を超える債務免除益が事業所得の総収入金額に算入すべきか否かの判断が争われた事件で大阪地裁は、債務者の資力喪失状態の判断は債務免除が行われる直前の財産状況を前提に行うことを予定していると指摘、債務免除益は債務の弁済が著しく困難である部分の金額の範囲内にとどまっていると認定して納税者側の主張を全面的に認容した。

 この事件は、病院業を営む者が独立行政法人のある機構から受けた24億円超の債務免除益を事業所得の総収入金額に算入せずに申告したのが発端。しかし原処分庁が一部は総収入金額に加算すべきと判断して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が債務免除益の特例(所基通36-17)の適用があると主張、その取消しを求めて提訴した事案だ。

 原処分庁側は、債務免除後も納税資力がなく、これに課税しても徴収不能になることが明らかな場合でなければ、債務免除益を収入金額に算入しないことを正当化することできないと主張を展開、病院経営者側の請求の取消しを求めていた。

 判決はまず、債務者が「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」という文言を用いる所得税基本通達36-17も、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であるか否かの判断について債務免除直前の財産状況を前提に行うことも予定していると理解するのが自然であり、所得税法36条の趣旨にも整合すると指摘。また、債務免除は機構側の合理的な企業再生スキームに準じて行われており、病院側の資産状況について監査法人の調査等を踏まえて行われたものであるとも認定。

 その結果、病院側は債務免除を受ける直前に資力を喪失して債務弁済が著しく困難な状態にあり、債務免除益は所得税基本通達36-17が適用されると判示して、病院側の主張を全面的に認容している。

(2012.02.28 大阪地裁判決、平成21年(行ウ)第201号)