みなし配当課税の対象は相続が原因ではないため二重課税の対象外
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/21/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 清算手続結了前の相続株式への相続税課税と、清算後の留保利益の分配に対するみなし配当課税が二重課税に該当するか否かの判断が争われた事件で大阪高裁(中村哲裁判長)は、みなし配当課税の対象となる経済的利益は相続等を原因とするものではないことから、二重課税には当たらないと判断して原審の判断を支持、控訴を棄却した。

 この事件は、破産手続中の会社の株式を相続した控訴人らが相続税の納付後、株主として残余財産分配金を取得したことから、その分配金に係る所得のうち資本金の額を除いた分をみなし配当金として配当所得金額に計上して確定申告をした後、みなし配当金に係る所得部分は所得税法9条1項16号(非課税規定)に基づき所得税が課税されないという判断から所得税の更正の請求をしたのが発端。

 しかし、この更正の請求に対して原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その全部取消しを求めて提訴したところ原審が棄却したため、更にその取消しを求めて控訴したという事案である。

 控訴審はまず、所得税法25条1項3号が定める「みなし配当課税」は、株主等が法人の清算に伴い、それまで法人に留保されていた利益を残余財産の分配として受けたことを課税対象にするものであるから、その法人の株式を相続人が相続した場合における株式に対する相続税の課税とは課税対象を異にすると指摘。

 また、みなし配当課税は法人に留保されていた利益の分配によって実現した経済的利益を課税の原因とするものであるから、みなし配当課税の対象となる経済的利益は、非課税所得を例示した所得税法9条1項16号が定める「相続等を原因に取得したもの」には該当しないとも指摘した。

 その上で、清算手続結了前の株式を相続した場合にその株式に対して相続税を課すことと、清算後に生じる留保利益の分配を原因としてみなし配当課税をすることが、所得税法9条1項16号が定める所得税と相続税の二重課税には当たらないと判示して原審の判断を基本的に支持、控訴を棄却した。

(2016.01.12大阪高裁判決、平成27年(行コ)第85号)