譲渡代金の一部による保証債務の履行でも特例の適用は可能
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/18/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 保証債務の履行に伴う求償権の行使が不可能な場合の譲渡所得に係る課税特例の適用の可否が争われた事件で国税不服審判所は、資産の譲渡代金の一部による保証債務の履行でも、特例の適用は認められると判断、課税処分を全部取り消した。

 この事件は、不動産の賃貸・管理等を営む同族会社が第三者に負っていた敷金返還債務に係る物上保証人又は連帯保証人だった被相続人が、不動産の譲渡代金の一部で債務を代位弁済したものの、求償権の行使が不能であると判断、保証債務の履行に伴う課税特例を適用して申告をしたのが発端となった。

 しかし原処分庁が、不動産の譲渡は相続税納付のために行われたものであるから、保証債務を履行するための資産の譲渡には当たらないと判断、同特例の適用を否認して更正処分等をしてきたため、相続人(審査請求人)がその全部取消しを求めて審査請求したという事案。

 原処分庁は、被相続人による不動産の譲渡は、被相続人の亡母の相続税の納税資金を捻出するための譲渡であり、その他の不動産の譲渡も譲渡時点において、被相続人が連帯保証債務の返還に十分な資金を十分に保有していたので、両不動産の譲渡は保証債務の履行のためにものではない旨主張して、棄却を求めた。

 これに対して裁決は、同特例の適用には1)債権者に債務者の債務を保証し、2)保証債務の履行のための資産を譲渡し、3)保証債務を履行するとともに、4)求償権の全部又は一部を行使が不可能になった――という4つの実体的要件が必要であり、この実体的要件の1)、2)は、資産の譲渡収入が保証債務の履行に充てられたというけん連関係を要求するものと解釈。そのため、資産の譲渡収入の一部が保証債務の履行に充てられていないことをもって、直ちにこの実体的要件を欠くことになるものではなく、譲渡者の資産の保有状況が保証債務の特例の適用要件であるとは解されないという判断から、原処分を全部取り消した。

(2013.04.04 国税不服審判所裁決)