相続した賃貸用建物等の耐用年数は被相続人等の耐用年数で計算
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/26/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した賃貸用マンション等の償却費の計算に当たって中古資産の耐用年数を適用することができるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、減価償却資産の耐用年数は被相続人等の前所有者が用いた耐用年数によるべきであると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、不動産貸付業を営む審査請求人が相続により取得したマンション等について減価償却資産の耐用年数等に関する省令が定める中古資産の耐用年数等を基礎に償却費を計算、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入して確定申告したところ、原処分庁が中古資産の耐用年数の適用を否認、償却費の額が過大に計上されていることを理由に所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人がその全部の取消しを求めて審査請求した事案である。

 つまり請求人は、贈与等により取得した資産の取得費等(所法60)には相続による取得も含まれることが当然であり、中古資産の耐用年数等(耐用年数省令3)に相続を除く旨の明文の規定もなく、文言解釈の統一性の要請からも相続による取得も含まれると主張して、原処分の取消しを求めたというわけだ。

 しかし裁決は、耐用年数省令3条1項は所得税法施行令126条1項(減価償却資産の取得価額)が定める取得時の減価償却資産の取得価額(つまり購入対価等の額)を取得後の効用持続期間において費用化することが前提と解釈。また、相続等で取得した減価償却資産の取得価額は相続人等が被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとしていわゆる取得価額の引継ぎが行われ、償却費の額の計算をすることになっていると指摘。

 その結果、取得時の減価償却資産の取得価額を取得後の効用持続期間において費用化することを前提とした耐用年数省令3条1項を適用して相続等で取得した減価償却資産に係る償却費の額の計算を行うことはできないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2012.03.01裁決)