無料法律相談に係る日当は弁護士の事業による所得と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/08/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 自治体が行う無料法律相談を受託した弁護士会から会員弁護士に支払われた相談料の所得区分が争われた控訴審で、大阪高裁(永井ユタカ裁判長)は給与所得ではなく事業所得に当たると判断、弁護士の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、自治体主催の無料法律相談事業を有料で受託した弁護士会から支給された会員弁護士に支払われた相談業務1回当たりの日当を、原処分庁が事業所得と認定して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、弁護士がその取消しを求めて提訴したものの、原審が棄却したため、控訴してその取消しを求めていたもの。

 つまり、弁護士が自己の計算と危険において独立して行う通常の法律相談とは異なり、無料法律相談の対価は事業所得ではなく給与所得に当たると主張していた。というのも、主催者等によって対価の額、執務の時間と場所、相談者の割当が一方的に指定ないし決定され、執務時の遵守事項も定められているという事情があったからだ。

 これに対して控訴審は、無料法律相談の事実認定を行った上で、その趣旨、機能に照らすと担当弁護士に相談者の選択を認めないことが、即、弁護士が行う法律相談業務の事業性を否定する要因にはならないと指摘。また、担当弁護士の随意が制限されているのは間違いないものの、自治体が行う無料法律相談の枠組みに従って担当弁護士が執務すべきことは当然のことであるから、この枠組みが設定されていることが、無料法律相談所で弁護士が行う法律相談業務の事業性を損なうものでないとも指摘。結局、その態様において通常の法律相談と同様に弁護士が事業として行う法律相談であるというべきであり、事業所得に区分できると判示して弁護士側の控訴を棄却している。

(2009.04.22大阪高裁判決、平成20年(行コ)第172号)