税理士の事業廃止に伴い事業税等の経費性を認容、一部取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/28/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 税理士だった被相続人の事業所得の金額の計算上、従業員等への未払退職金、事業税等の必要経費算入の可否が争われた事件で、国税不服審判所は、税理士の死亡当時、未払退職金の発生を根拠づける労使慣行がなく、未払退職金の支払債務も確定したとはいえないと判断する一方、事業税等の必要経費算入については認め、原処分を一部取り消した。

 この事件は、税理士だった被相続人の所得税の準確定申告の際に、相続人である請求人らが未払退職金を必要経費に算入したことをめぐり、原処分庁がその支払債務が未発生・未確定、かつ事業税等も相続発生後に納付額が具体的に確定している事情を踏まえ必要経費算入を否認、更正処分等をしてきたのが発端。

 そこで請求人らが、相続の発生に伴って従業者が退職するとともに、被相続人の税理士業務は廃業となり、所得税法63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)を適用できることから、未払退職金及び事業税等はいずれも必要経費に算入できるとして、原処分の取消しを求めて審査請求した事案である。

 これに対して裁決は、税理士の死亡当時、未払退職金の発生を根拠づける労使慣行の成立が認められず、未払債務も発生・確定していたとはいえないと認定、必要経費算入を否定した。しかし事業税等は、関与先との委任契約が子の税理士に承継されることなく終了し、被相続人の登録が抹消され、子の税理士名簿に登録された事務所所在地が被相続人の事務所である旨を表記しないものに変更されたことを踏まえ、子が被相続人の税理士業務を承継し、被相続人と同一の事業を行っていたとは認められないと認定。その上で、被相続人の死亡後の事実関係等を社会通念に照らして考えれば、被相続人の事業廃業が認められ、所得税法63条の適用が受けられると判断、結果的に原処分の一部を取り消す格好になった。

(国税不服審判所、2013.07.05裁決)