控訴審も柔道整復師は医業等を営む個人に当たらないと判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/17/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 柔道整復師が社会保険診療報酬の所得計算の特例の対象となる「医業又は歯科医業を営む個人」に当たるか否かの判定が争われた事件で、控訴審の東京高裁(鈴木健太裁判長)は柔道整復の施術は医療行為と比べて危険度の低い行為であり、医師ではなく柔道整復師が施術をすることから、その業務の範囲や施術法についても制限があると指摘して一般的に柔道整復が医療行為に当たるとは言えないと判示、道整復師の控訴を棄却した。

 この事件は、柔道整復師がその所得に対して社会保険診療報酬の所得計算の特例(措法26(1))を適用して、同項所定の率の必要経費を控除して確定申告したことが発端になったもの。これに対して、原処分庁が柔道整復師は「医業又は歯科医業を営む個人」には当たらないと申告内容を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したものの、原審の東京地裁が柔道整復師の請求を斥けたため、控訴の上、さらにその取消しを求めた事案である。

 つまり、柔道整復師は社会保険制度との関連では医師と並んで医療制度の一環を担っており、柔道整復師の受け取る社会保険収入についても租税特別措置法26条1項を適用すべきであると主張していたわけだ。

 これに対して控訴審は、医師等に対する租税特別措置は医師等に対する税負担を軽減する目的を超えて、国民皆保険という政策を実現するための措置とまではいえず、社会保険制度の維持発展という目的のために導入されたものとも認められないと指摘。それを前提に租税特別措置法26条1項の医業又は歯科医業を営む個人が柔道整復師を含むと解釈することはできないとも指摘。結局、医療費の支給対象である施術の担い手である柔道整復師が同項規定の医業又は歯科医業には該当しないと認定、控訴を棄却している。

(2009.04.15 東京高裁判決、平成20年(行コ)第331号)