大学教授が大学から特許権の対価として受領した金員は雑所得に該当すると判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/15/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 大学法人の設立前に国に譲渡した特許を受ける権利に特許が付与され、大学法人がその特許権を譲渡したことに伴い、大学法人から教授に支払われた5000万円余の金員の所得区分が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有するものに当たることから、一時所得には該当せず雑所得に該当すると判断、大学教授側の請求を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、国立大学の教授が大学法人の設立前に国に譲渡した特許を受ける権利に特許が付与され、大学法人がその特許を譲渡して収入を得たことを契機に、大学法人側から5000万円余の金員を受領したことを受け、その金員を雑所得として確定申告したのがそもそもの発端。しかし、申告後、大学法人から受領した金員は一時所得に該当するという判断から、特別控除後の残額の2分の1相当額によって総所得金額を計算すべきであると主張して減額更正の請求をしたわけだ。これに対して原処分庁が、更正をすべき理由がないと判断して減額更正の請求を斥けたため、その取消しを求めて提訴したという事案である。

 東京地裁は、利子所得ないし譲渡所得にも該当しないことは当事者間に争いがないため、事実関係を整理した上で、大学法人から受領した金員が一時所得と雑所得のいずれに該当するのかを検討している。その結果、教授側が他の共同発明者と共に発明し、その発明に係る特許を受ける権利を国に譲渡後、特許権の設定登録等を受けた特許権を承継・取得した大学法人側が、譲渡収入を原資に新発明規程の算定基準に基づいて発明者側に支払うべき金員を算定した上で金員が支払われたと認定した。

 その上で、その支払いが発明に係る特許を受ける権利の国への譲渡と密接に関連する給付であるという事情に照らせば、偶発的に金員が支払われたとはいえないと指摘した。結局、大学法人側から支払われた金員は、所得税法34条1項の「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質」を有するものに当たることから、一時所得に該当するとはいえず、雑所得に該当すると判断して、大学教授側の主張を斥ける判決を言い渡した。

(2016.05.27東京地裁判決、平成27年(行ウ)第390号)