「外れ馬券は経費」との最高裁判決、所基通改正予定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/16/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 国税庁は11日、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)が10日に「外れ馬券の購入費も経費に当たる」との判断を示し、検察側の上告を棄却したのを受けて、所得税基本通達34-1を改正する考えを明らかにした。これまで、競馬の馬券の払戻金については、払戻金を得るに当たって行った馬券の購入行為の態様や規模等にかかわらず、一律に「一時所得」として取り扱っていた(所得税法第34条第1項、所得税基本通達34-1)。

 今回の裁判は、競馬の払戻金を申告せず、約5億7千万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた元会社員の上告審である。最高裁は、競馬の馬券の払戻金はその払戻金を受けた者の馬券購入行為の態様や規模等によっては、一時所得ではなく、雑所得に該当する場合があり、その場合においては外れ馬券も所得金額の計算上控除すべき旨判示し、検察側の上告を棄却した。

 裁判の争点は、競馬の馬券の購入を機械的、網羅的、大規模に行っており、かつ、そうした購入を実際に行っていることが客観的に認められる記録が残されているなどの場合において、1)競馬の馬券の払戻金は、一時所得と雑所得のいずれに該当するか、2)所得金額の計算上控除すべき金額は、的中した馬券の購入金額に限られるか否か、というもの。一、二審判決は、元会社員の購入方法の特殊性を重視し、外れ馬券の経費算入を認めた。

 最高裁は、元会社員が、馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットで長期間にわたって多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、多額の利益を恒常的に上げていたという特殊性に着目。一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態があるなどの事実を考慮すれば、払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たる、との判断を示した。

 雑所得については、所得税法第37条第1項の必要経費に当たる費用は同法第35条第2項第2号により収入金額から控除される。したがって、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態があるのだから、当たり馬券の購入代金の費用だけでなく、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ、外れ馬券の購入代金は同法第37条第1項の必要経費に当たる、とした。

 この最高裁判決を受けて国税庁は、競馬の馬券の払戻金を得るに当たって行った馬券の購入行為の態様や規模等にかかわらず、一律に「一時所得」として取り扱っていた所得税基本通達34-1を、パブリックコメントの手続きを経た上で改正し、同庁ホームページ上で公表する予定という。ただし、今回の裁判例は、「あくまで例外」として、一般の競馬ファンのケースでは、今後もこれまでの課税方針が維持される可能性が高いとみられている。

(2015.3.10最高裁第三小法廷判決、平成26年(あ)第948号)

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