航空機リース事業に伴う損失の申告にやむを得ない事情を認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:07/07/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 匿名組合契約による航空機リース事業に伴う損失が不動産所得の損失に該当するか否か、不動産所得の損失として申告したことに「正当な理由」が認められる否かの判断が争われた事件で最高裁(千葉勝美裁判長)は、所得区分に関する1、2審の判決内容は支持したものの、平成17年の通達改正前の年分の申告の際に不動産所得の損失として申告したことには正当な理由があったと認定、過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。

 この事件は、匿名組合契約に基づく航空機リース事業に出資した組合員が、その事業に伴う損失を不動産所得の損失に計上して申告したところ、原処分庁が不動産所得に係る損失には該当せず、損益通算の対象にもならないと否認、更正の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴した。

 ところが、1、2審とも、不動産所得には該当しないため損益通算は認められないと判断する一方、通達改正によって行政解釈の変更があったとも認められないから正当な理由があったとはいえないとして棄却したため、更にその取消しを求めて訴訟承継人である上告人らが上告していたという事案である。

 最高裁は、匿名組合契約に基づき実質的な営業者と共同して事業を営む者の地位を有する場合は、事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に該当し、それ以外の場合は事業内容にかかわらず、組合員自身の事業として行われているため事業所得となる場合を除いては雑所得に該当すると解釈し、平成17年改正通達はこれと同旨の考え方であると指摘。同時に、同通達改正によって、匿名組合の出資に係る所得区分に関する課税庁の公的見解が変更されたとみることができるとも指摘した。

 その上で、同通達改正前の旧通達に従ってされた各申告に触れ、リース事業に伴う損失を不動産所得の損失として申告したことには、納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の賦課は不当又は酷になると判示した。しかし、同通達改正後の年分の申告にはそうした事情が認められず、正当な理由は認められないという判断をしている。

(2015.0612最高裁第二小法廷判決、平成24年(行ヒ)第408号)