外形的に土地の買取りの形式をとっても収用特例は不適用
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/27/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 都市計画法が定める事業用地のために地方自治体に売却された土地をめぐって収用特例が適用できるか否かの判定が争われた事件で最高裁(田原睦夫裁判長)は、収用特例の適用を認めた控訴審判決を否定、土地の具体的な利用計画を有しておらず、特例の適用を受けられるようにするため、形式的に建築等許可申請等の手続きをとったにすぎないと認定、信義則に関する点を更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。

 この事件は、被上告人ら(納税者ら)が所有する土地を地方自治体に売却した対価について収用の特例を適用して申告したところ、上告人ら(課税当局)が同特例の適用を否認、更正及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、その取消しを求めていたもの。一審で納税者敗訴の後、控訴審が納税者らの主張を認める判決を言い渡したため、課税当局側が上告、控訴審の判決の取消し求めていたという事案だ。

 最高裁は、原審で確定した事実関係の概要を整理した上で、土地の所有者が具体的に建築物を建築する意思を欠き、単に収用特例の適用を受けられるようにすべく、形式的に都市計画法55条1項に基づく不許可の決定を受けることを企図して建築許可の申請をしたにすぎない場合は、たとえ申請に基づいて不許可決定がされ、外形的に都市計画法55条1項に基づく土地の買取りの形式がとられていたとしても、収用特例の適用を認めることはできないと解釈して控訴審の判断を否定。ただ、納税者が主張する信義則違反については更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻すという判決内容になった。

(2010.04.13 最高裁第三小法廷判決、平成20年(行ヒ)第110号)