特許の権利対価に係る訴訟上の和解金は被相続人の雑所得
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/25/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 職務発明に係る特許を受ける権利を勤務先に承継させた子の親が取得した、訴訟に伴う和解金つまり特許を受ける権利の対価の帰属が争われた事案で、国税不服審判所は相続人の雑所得に当たると認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、審査請求人の子が職務発明に係る特許を受ける権利を勤務先に帰属させた後に死亡したため、親がその勤務先に特許を受ける権利の対価の支払いを求める訴訟を提起、和解に伴って取得した金員を一時所得として申告したことが発端。しかし、原処分庁が雑所得と認定して更正処分をしてきたためその取消しを求めるとともに、和解金は被相続人に帰属すべきであるとして更正の請求をしたものの、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しも求めて審査請求をしていたという事案だ。

 裁決は、職務発明に係る対価請求権のうち、特許を受ける権利を使用者に承継後に支払われる不足額部分は、承継時には対価の額が未実現であるため、直ちにその全部に権利行使することは困難であり、対価請求権が法的に発生していても未だ権利実現の可能性を客観的に認識することができず、和解成立時に収入の原因となる権利が確定したと認められることから、請求人の所得とみるのが相当であると判断。

 また、和解金は特許法に基づく相当の対価の不足額を求めた訴訟により確定したものである結果、特許の権利に係る金員は使用者が承継して独占的に利用する権利を取得して獲得した利益の実績に基づいて算定されるべきであり、その実質は使用者に承継した特許を受ける権利の対価であることには疑いがないことから対価性があると認定、一時所得と解釈することは相当ではないと判断した。結局、利子所得、一時所得のいずれにも該当しないことから、雑所得に該当すると判断して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2009.10.09裁決)