譲渡収入金額から相続開始時までの値上り益相当額の控除を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/21/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 相続で取得した不動産を譲渡して譲渡所得の申告をする際に、被相続人が土地を取得した時から相続開始時までの値上り益相当額を譲渡収入金額から控除できるか否かの判断が争われた審査請求事件で、東京国税不服審判所は、所得税法は譲渡収入金額から被相続人の取得費を控除した値上り益に対して所得税を課すことを容認していると解釈するのが相当と判断して棄却した。

 この事件は、相続で取得した不動産を譲渡してその申告をした後、被相続人がその不動産を取得した時から相続開始時までの値上り益相当額は所得税法9条1項15号の非課税所得に当たると判断、減額更正の請求をしたことが発端。これに対して原処分庁が、贈与等で取得した資産の取得費等(所法60(1)一)は、相続人が相続した資産を譲渡した段階で被相続人の保有期間中の値上り益をも含めて課税を行うことを予定しているという解釈の下に非課税所得には当たらないと判断、更正処分をしてきたためその取消しを求めて審査請求された事案である。

 請求人は、土地の値上り益の場合、相続時までの増加額という経済的価値が相続税の課税対象額とその後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになるから、相続税と所得税の二重課税に該当し非課税所得に該当すると主張したわけだ。

 これに対して裁決は、贈与等により取得した資産の取得費等はいわゆる取得価額引継方式を採用していることから、相続人が相続した資産を譲渡した場合は、その譲渡収入金額から被相続人の取得費を控除したいわゆる値上り益について譲渡所得税が課されると解釈。しかも、この値上り益には被相続人が取得後、相続開始時までの値上り益部分も含まれていることを考えれば、その値上り益部分についても所得税を課すことを容認していると認めるのが相当と指摘して、審査請求を棄却している。

(東京国税不服審判所、平成23年12月2日裁決)