相続した株式の残余財産分配金に係る剰余金の配当は課税対象
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/22/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 相続した株式の発行会社から交付された残余財産分配金のうち、剰余金の配当とみなされる金銭が非課税所得に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、相続を直接の原因として実現したものではないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、相続した株式の発行会社から解散に伴う残余財産の分配として支払いを受けた金銭の一部を配当所得として申告後、既に相続税が課税されているので配当所得課税は二重課税になるという考えから更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求したという事案。

 つまり、相続した破産手続中の株式会社の株式に係る分配見込額に相続税が課税された後、株式の発行会社から交付された残余財産分配金のうち剰余金の配当とみなされる金銭が所得税法9条1項16号に定められる非課税所得に該当するか否かが争点になった事案だ。

 裁決は、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」は相続を直接原因として相続人の下で実現した所得に限られ、相続後に相続とは別の原因で実現した所得は該当しないと解釈。しかし、みなし配当金の取得によって請求人らに帰属した所得は相続後3年以上の期間経過後に、相続とは別の事由、つまり会社の清算手続きによる債務の完済に伴う残余財産の最終的な確定によって初めて実現し、相続開始時にみなし配当金の支払原因となる具体的な残余財産分配請求権は確定的に発生していなかったため、相続を直接の原因として実現したものではない。
 
 また、みなし配当金に相当する経済的価値は相続開始時の株式の価値に相当する経済的価値と同一のものでなければならないが、相続開始後に会社の資産等の状況に種々の変動があり、変動後の最終的な清算価値を具現化した残余財産分配金の額に相当する経済的価値は変動前の清算価値に基づいて評価された株式の価額に相当する経済的価値と同一と評価できないという判断から、みなし配当金は所得税法9条1項16号の非課税所得には該当しないとして審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、平成24年11月14日裁決)