弁護士費用は売上減少に伴う損害賠償請求のための費用と認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/24/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 事業所得の金額の計算上、住宅の地代家賃、水道光熱費、長男にかかった教育費用・弁護士費用及び雑費が必要経費に算入できるか否かの判断が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、地代家賃、水道光熱費、教育費用及び雑費の必要経費算入は認められないものの、弁護士費用の2分1相当額は必要経費に算入すべきと判断して納税者側の請求を認容、原処分の一部を取り消す旨の判決を言い渡した。

 この事件は、自宅で生保商品の販売代理業を営む夫婦が、所得税の確定申告及び修正申告の際に、住宅の地代家賃、水道光熱費、長男にかかった義務教育代行費用と弁護士費用、さらに雑費を必要経費に算入して申告したところ、原処分庁がいずれも家事費に該当するとして必要経費算入を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて納税者が提訴したという事案である。つまり納税者側は、いずれの支出も妻と2分の1ずつに按分した上で必要経費に算入して、所得税額を算出していたわけだ。

 これに対して判決は、支出した費用が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要性があるということが客観的にみても相当であることを要すると解釈。その解釈からすると、地代家賃、水道光熱費は業務遂行のために必要な部分として明確に区分することができないと指摘。また教育費用についても、その支出がなければ売上を確保することができなかったという具体的な根拠に乏しく、客観的な必要性を根拠付けるものとはいえないと指摘して、納税者側の主張を斥けた。さらに、雑費についても同様の判断を示した。

 しかし弁護士費用については、業務に係る売上の減少による損害賠償を求める訴訟を提起し、そのための事前交渉を弁護士に委任した際の着手金として認めるのが相当と指摘した上で、妻と2人で各業務に関する必要経費を支払っていることから、弁護士費用の2分の1相当額は必要経費算入を認めるのが相当と判示して、主張の一部を認容している。

(2013.10.17東京地裁判決、平成24年(行ウ)第637号)