簡易な記録の方法と認定、青色申告取消処分を全部取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/08/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 現金出納帳等の帳簿の未作成を理由にした青色申告承認取消処分の適否が問われた事案で、東京国税不服審判所は不動産所得及び農業所得に係る取引の殆どを市販の伝票に記載しており、取引そのものの記録をしていると認定、青色申告承認取消処分を取り消すとともに、更正処分等も全部取り消した。

 この事案は、不動産貸付業と農業を営む者が審査請求していたもので、原処分庁が税務調査の際に帳簿書類の提示を求めたものの不提示だったため青色申告を取り消すとともに、請求人が営む不動産管理会社に同族会社の行為計算否認規定を適用、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求していた事案だ。

 原処分庁は、不動産所得に係る帳簿の未作成を理由にした現金出納帳の不提示は現金出納帳を備え付けていないと認定。一方、請求人は不動産所得に係る取引を記載した伝票を作成し保存していたから帳簿の備付けはされていたと主張していた。

 裁決はまず、青色申告承認取消しは形式上の事実だけでなく個々の事情を総合的に勘案し、真に青色申告の維持にふさわしくない場合に限られるべきと指摘。その上で、請求人は不動産所得・農業所得に係る取引の殆どを市販の振替伝票に記載して、取引そのものの記録はしており、簡易な記録の方法及び記載事項による記帳を行おうとしていると認められ、帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は甚だ軽微であるとも認定した。

 その結果、真に青色申告を維持するにふさわしくないと場合とまでは認められないから、取消処分は不当であるとして、更正処分の全部を取り消している。

(東京国税不服審判所、2010.12.01裁決)