労働条件等の重大な変動を理由に退職手当等と認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/30/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 幼稚園を運営する学校法人が理事長兼園長に支払った金員が、退職金又は給与のいずれに該当するかの判断が争われた事件で国税不服審判所は、役職の変動はなくても労働条件等に重大な変動があり、従前の勤務関係の延長とみることはできないことから、退職手当等としての性質を有すると認定、原処分を全部取り消した。

 この事件は、幼稚園を設置運営する学校法人(審査請求人)が理事長兼幼稚園園長に退職金として支払った金員を、原処分庁が退職の事実がないことを理由に給与所得(賞与)と認定、源泉所得税の納税告知処分等をしたのが発端になったもの。そこで請求人側が、退職という事実に基因して支払ったものであり、再雇用後の勤務関係は従前の勤務関係の延長でもないから退職所得に該当すると主張、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、園長が他の職員と同様に引き続き出勤して給与を受領していることを理由に、1)勤務関係の終了とは認められない、2)理事長としての業務も引き続き行っている、3)勤務時間及び給与等の減少割合からも、園長としての勤務関係の性質、内容及び労働条件に重大な変動があったと認めることはできないため給与所得に該当すると主張して、審査請求の棄却を求めた。

 しかし裁決は、園長並びに幼稚園の副園長及び事務長の答述その他関係資料等によれば、園長の職務に占める理事長としての職務の割合はごくわずかと認められ、実質的な園長としての職務のほとんどを副園長に引き継ぐことにより量的にも質的にも大幅に軽減され、その実態に即して基本給を減額するなど労働条件も大きく変動したものと認められると指摘。

 また、園長としての勤務関係の性質、内容及び労働条件等に重大な変動があり、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とみることができない特別の事実関係があるとも認定。結局、所得税法30条1項が定める退職所得に該当する判断、原処分を全部取り消した。

(2014.12.01 国税不服審判所裁決)