譲渡代金と保証債務の履行に因果関係は認められないと裁決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/15/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 保証債務の履行のための譲渡所得の課税の特例が適用されるものとして行った更正の請求の可否をめぐって争われた事案で国税不服審判所は、債務保証の事実つまり譲渡代金と保証債務の履行との間には因果関係がないこと、また譲渡代金が借入金の返済に充てられた事実がないとも認定して所得税法64条2項の保証債務の履行のための譲渡所得の課税特例は適用できないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は審査請求人が妹夫婦等の借入金の代位弁済をするとともに他の兄弟からの借入金で銀行からの借入金の返済をした4年後に所有土地を譲渡、兄弟等に返済をしたことがきっかけになったもの。そこで、その譲渡所得の申告を一旦した後、妹夫婦の借入金の代位弁済、銀行等への返済が保証債務の履行に当たり、譲渡所得も保証債務の履行となる借入金の弁済のためのであるから、特例の適用があると判断して更正の請求をしたところ、原処分庁が更正の請求を拒否してきたため、その取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決は、銀行等への支払いは本来支払うべき売買代金を抵当権消滅のために支払ったものにすぎないと認定。また、所得税法64条2項の適用要件に触れた上で、土地の譲渡が代位弁済後に行われていることから、譲渡代金が直接保証債務の履行に充てられたわけではないと指摘。さらに、保証債務の履行に充てられた事実の一部は認められるものの、譲渡が保証債務の履行から3年以上経過しているとともに、返済が自己資金で行われていた事実を指摘。結局、請求人が行った譲渡代金と保証債務の履行との間に因果関係は認められないから特例の適用は認められないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所 2009.06.15裁決)