職務発明に係る特許を受ける権利の相当対価は雑所得と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/27/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 職務発明に係る特許を受ける権利の相当の対価をめぐる争いの結果、和解で決着した後に使用者から受領した和解金の所得区分の判定が争われた事件で、大阪地裁(山田明裁判長)は雑所得に該当すると判示した上で納税者の訴えを棄却した。

 この事件は、職務発明に係る特許を受ける権利の相当の対価を求める訴えを起こした従業者が、和解の成立に伴って、使用者から3000万円の和解金を受領したことがそもそもの発端。そこで、この和解金を雑所得として申告した後、譲渡所得に該当すると判断し直して更正の請求をしたところ、原処分庁から更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その取消しを求めて提訴した事案である。

 納税者側は、和解金は権利の継承の対価として受け取ったものであるから譲渡所得に該当すると主張した。というのも、和解金は特許法に基づいて取得した相当の対価支払請求権を実現させたものという考えからだった。

 これに対して大阪地裁は譲渡所得課税の趣旨等に触れ、譲渡所得に該当するためにはその資産の増加益が「所有者の支配を離れる機会に一挙に実現したもの」であること、つまり資産の所有権等の権利が相手方に移転する機会に一時に実現した所得であることが要求されると解釈。そうした理解をすれば、譲渡所得の収入金額の権利確定の時期をその資産の所有権その他の権利が相手方に移転する時であると判示した昭和40年9月24日の最高裁判決とも整合するという考えからだ。

 その結果、和解金は特許を受ける権利が使用者側に移転する機会に一時に実現した所得ではないから、特許を受ける権利に係る譲渡所得には該当しないと判断。さらに、職務発明の対価として支払われたものであり、特許法が定める相当の対価は労務等の役務又は資産の譲渡対価としての性質を有しないものでもないから一時所得にも該当しないと判示して、納税者の主張を棄却した。納税者側が控訴したため、争いの舞台は控訴審に移った。

(平成23年10月14日判決、平成21年(行ウ)第155号)