生活の拠点は海外にあったから非居住者と認定、一部取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/18/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 海外のグループ会社に赴任中に親会社から付与されたリストリクテッド・ストック・ユニットをめぐり居住者か非居住者かの判定が争われた事件で、国税不服審判所は客観的事情を勘案、株式の取得時は生活の本拠が海外にあったと認定して原処分を取り消した。

 この事件は、審査請求人が勤務先の親会社から付与されたリストリクテッド・ストック・ユニットの権利が退職後に確定したが、その所得を給与所得に含めずに確定申告したところ、原処分庁が株式の取得時は居住者に該当するから、その所得は給与所得に該当すると判断して所得税の更正処分等をしてきたのが発端。そこで請求人が、株式の取得時は非居住者に該当するからその所得は課税所得に含まれないと反論、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。
 
 つまり、勤務先の親会社から付与されたリストリクテッド・ストック・ユニットの権利確定によって株式を取得した日の請求人の居住形態が争われたもので、日本国内の勤務先から海外のグループ会社に赴任後、事情変更により退職したが、引き続き海外に滞在していたという事案である。

 しかし原処分庁は、滞在期間のうち退職後の日本と海外の滞在日数、両国での住居、退職後の就職活動等、生計を一にする配偶者その他の親族の居所及び資産の所在等の客観的諸事情を総合的に判断した結果、株式を取得した日において請求人は居住者に該当すると認定してきたわけだ。

 これに対して裁決は、退職後の期間も日本と海外の各滞在日数に大差はないものの、日本に帰国するまで引き続き海外の住居を生活及び職業活動の拠点とし、退職前後における海外での生活状況に変わりがないこと、就職活動等によって日本での就職が決まったものの帰国するまで無職だったこと、日本国内に生計を一にする親族が不在、さらに両国での資産の保有及び管理等の状況を総合的に勘案すれば、退職後の請求人の生活の本拠も退職前と同じく海外にあったと認めるのが相当と認定した。結局、株式を取得した日において居住者には該当せず非居住者に該当すると判断して、原処分の判断を否定している。

(国税不服審判所、2012.09.26裁決)