司法書士のロータリークラブ会費の必要経費算入を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/07/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 司法書士が支払ったロータリークラブの入会金及び会費が必要経費に算入できるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、司法書士の業務と直接関係するものとはいえず、その活動が業務の遂行上必要なものとは認められないことから、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、司法書士業を営む審査請求人が、ロータリークラブの入会金及び会費を事業所得の金額の計算上、必要経費に算入して所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が、入会金等の必要経費算入を否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、司法書士が顧客の獲得につながるロータリークラブの活動は事業の遂行上必要な活動であるから必要経費に算入することができると主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人は、事業の業務と直接の関係を持つことが要件であるという解釈はできないと判示した弁護士が絡んだ東京高裁平成24年9月19日判決を拠り所に、必要経費算入が認められるべきと主張した。

 しかし裁決は、事業所得の金額の計算上、必要経費が総収入金額から控除される趣旨に触れ、投下資本の回収部分に課税が及ぶことを回避するためにあると解釈した上で、日常生活において事業所得の獲得活動のみならず、私的な消費活動も行っている個人事業主の事業所得の計算に当たっては、事業上の必要経費と所得の処分である家事費との明確な区分が必要と指摘した。

 しかし、請求人がロータリークラブの会員として行った活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動は、登記又は供託に関する手続きについて代理するなどの司法書士の業務と直接関係するものとはいえず、司法書士としての業務の遂行上必要なものということもできないため、請求人が支出した各諸会費は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできないと判断、棄却している。

(国税不服審判所 2014.03.06裁決)