被相続人から承継する所得税は慰留分減殺請求後の相続分で按分
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/18/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 年の中途で死亡した被相続人が納付すべき所得税額のうち、審査請求人である相続人が承継する所得税額は法定相続分で按分された額か、遺言に基づいて指定された相続分で按分された額であるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は遺留分減殺請求によって修正された相続分で按分された額であると判断、原処分を一部取り消す裁決を言い渡した。

 この事件は、年の中途で死亡した被相続人に係る所得税の確定申告書を提出しなかった請求人に対して、原処分庁が被相続人の確定申告書を提出する義務が請求人にあり、被相続人に係る所得税額のうち法定相続分による按分額を承継すると判断、所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしたのが発端となった。

 そこで請求人が、遺言により遺産の割当てから完全に排除されているのは相続分を零とする指定もされたものと解すべきであり、被相続人から承継する納付すべき税額は零円であると主張して、原処分の全部取消しを求めた事案である。これに対して原処分庁側は、遺言は特定の財産を請求人以外の各相続人に相続させる趣旨のものであり、相続分の指定をしたものではないと反論、請求人が被相続人から承継する納付すべき税額は10分の1の法定相続分で按分された額であるから、原処分は適法であると主張していた。

 しかし裁決は、遺言は請求人を除く他の各相続人に被相続人の財産全部を確定的に帰属させるという遺産分割方法を定めるとともに、法定相続分とは異なる相続分を定めたものと解するのが合理的であり、請求人の相続分に関する記載がないのは請求人の相続分を零と定めたものと解するのが相当と指摘。

 その上で、他の各相続人に対する遺留分減殺請求によって遺留分の限度(20分の1)で相続財産を取得したのであるから、請求人の相続分は20分の1に修正されたと解釈。その結果、請求人が承継する納付すべき税額は遺言で指定された相続分、つまり20分の1で按分された額であると判断して、原処分の一部を取り消している。

(国税不服審判所、2011.12.08裁決)