保証金の支出時に償却分を一括して仕入税額控除
カテゴリ:01.法人税, 03.消費税 トピック
作成日:07/08/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 事業用建物の賃貸借契約を締結した場合、通常保証金を支払うことになるが、例えば、契約書で「保証金については20%相当分を本契約終了時に償却するものとする」と規定されていた場合は、税務上の取扱いはどうなるのだろうか。まず消費税法上、解約時に消費税の仕入税額控除をすると思いがちだが、保証金のうち償却される20%相当分については、契約時に消費税の仕入税額控除の対象になる。

 賃貸借契約等の終了や一定期間経過後に返還される保証金や敷金については、実質は単なる預け金としての性質を持つことから、消費税法上は課税対象外取引とされている。一方、償却される部分については、期間の経過その他賃貸借契約終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなる部分の金額として、その返還しないこととなった契約時点で資産の譲渡等が行われたものとされて、償却部分全額が仕入税額控除の対象となる。

 上記の契約では、契約終了時に20%を償却する旨の記載があるのみで、これ以外に保証金の償却に関する記載がないため、解約時期及び解約事由のいかんにかかわらず保証金の20%が償却される。したがって、契約時に保証金20%の返還されないことが確定することになるから、契約時に20%相当額の償却部分について資産の譲渡が行われたこととなり、同時に仕入税額控除の対象となるわけだ。

 また、法人税法上の取扱いについては、その保証金のうち将来返還される部分については、やはり単なる預け金としての性質を持つため、損金とはならない。償却部分については、その支出の効果が、保証金を支払った期以降も契約期間にわたって続くため、法人税法上の繰延資産として取り扱われることになる。繰延資産として取り扱われる場合、原則5年で償却計算を行う。

 なお、支出した保証金の効果が支出の日後1年以上に及び、契約による賃借期間が5年未満で、契約時に更新料等の権利金の支払条項がある場合には、その賃借期間で償却することになる。ここで注意しなければならない点は、法人税法上は5年又は賃借期間で償却することになるが、消費税法上はその保証金の支出時に、償却部分が一括して仕入れ税額控除の対象となることである。