配当還元方式活用の相続税対策スキームを判決も否認
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:09/29/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 いわゆるフォーエスキャピタル(株)が売り出していた、取引相場のない株式を評価する際に特例的に認められている配当還元方式を活用した相続税対策を原処分庁が否認したことから、その課税処分の取消しを求めて争われていた事件で、東京地裁(富越和厚裁判長)は配当還元方式による評価を認めることは実質的な課税の公平を著しく欠くと判示、これら一連の事件では初判決となる納税者の主張を棄却する判決を下した。
 この相続税対策スキームは、a 株式公開された場合にはキャピタルゲインを得ることができる、b 常に少数株主となるため配当還元方式の評価が可能となる、ことが売りの他、出資者が割当てを受けた株式の売却を希望する時に購入希望者がいない場合は、日本スリーエスの関連会社が純資産価額で買い取る、ことなどが出資の際に約されていた。
 このため、配当還元方式による評価が認められるか否か、財産評価基本通達総則6項の行使の可否が争点となっていた。まず、配当還元方式による評価については売却を希望する場合には純資産価額による買取りが保証されていたことを指摘するとともに、形式に配当還元方式による評価を認めることは実質的な課税の公平を著しく欠くと判示。また、総則6項の行使について納税者が手続要件をクリアしていないと主張したことに対して、同項は行政組織内部における機関相互の指示、監督に関して定めた規定であり、要件をクリアしていないことから直ちに国民の権利、利益に影響が生じるものでもなく、納税者の主張は自己の利益に直接関係のないものと指摘、納税者の主張を棄却する判決を下した。
 (1999. 3.25東京地裁判決、平成9年(行ウ)第232号)