定期預金を相続財産と認定し、重加算税の賦課は妥当と判断
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/17/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 相続財産である家族名義預金を申告せず、税務調査においても根拠のない答弁を行った納税者に対して重加算税を賦課したことの適否が争われた事件で、国税不服審判所は国税通則法68条に規定する重加算税の賦課要件を満たすと判断して、審査請求を棄却した。

 この事件は、相続税の申告をめぐり、原処分庁が被相続人の子ども名義の各定期預金を相続財産と認定して相続税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行ってきたことから、被相続人の子である審査請求人らが、各定期預金は被相続人から生前に贈与されたものであるから相続財産には当たらないと主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 裁決はまず、被相続人が自ら資金を出えんし、ペイオフ対策を念頭に置いて被相続人の子らの名義を使って各定期預金を預け入れた状況、通帳及び印鑑が相続開始時点まで被相続人の下で管理されていた状況から、生前に定期預金が請求人らへ贈与された事実はなく、定期預金の預入日から相続開始日まで一貫して被相続人が管理、運用してきたと認定。

 その上で、被相続人の妻は、定期預金を相続財産と認識しながらも関与税理士に告げず、定期預金の記載がない遺産分割協議書を添付して相続税の過少申告を行い、税務調査時にも生前贈与されたものであるとする根拠のない申述をして、真実の相続財産を隠ぺいする態度を貫こうとしたと指摘した。

 さらに、請求人らは相続財産の調査、申告を被相続人の妻に委任していたが、各定期預金が相続財産であることを認識しつつもそれを関与税理士に告げず、被相続人の妻とともに相続税の過少申告を行っていたと認定するとともに、受任者である被相続人の妻の選任及び監督に過失がないと認められる特段の事情も認められないとも認定した。

 結局、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上でその意図に基づく過少申告を行ったものと認定、重加算税の賦課要件を満たすと判断して審査請求を棄却した。

(2015.10.02国税不服審判所裁決)