不動産取得税が減額される場合の戸数要件は1棟毎に判断
カテゴリ:06.地方税 裁決・判例
作成日:01/10/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 共同住宅等を建設した場合に不動産取得税が減額される戸数要件を複数の建物で判定するのか、1棟毎に判定するのかの判断が争われた事件で最高裁(木澤克之裁判長)は、同税が減額される独立区画部分が100以上あるか否かは1棟毎に判断するのが相当と判示、不動産会社の請求を認容した控訴審判決を否定する逆転判決を言い渡した。

 この事件は、不動産の売買・仲介等を行う法人が土地の取得に係る不動産取得税の賦課処分を受けて不動産取得税を納付後、共同住宅等が建設されたことに伴い同税が減額されるべきと判断して還付請求したものの、都税事務所側から還付をしない旨の処分を受けたため、その処分の取消しを求めて提訴したもの。

 その結果、控訴審の東京高裁が、不動産取得税の還付制度の目的を考えれば、取得した土地に建築された共同住宅等が独立区画部分を1棟で100以上有する場合と、複数棟で合計100以上有する場合とに違いがあるとはいえず、1棟の共同住宅等ごとに判断すべき旨が法令明示されてもおらず、減額規定の制限的な適用が正当化されるものではないと指摘。その上で、複数棟の共同住宅等で合計100以上の独立区画部分がある場合にも適用されると判示して法人側の請求を認容したため、都側が控訴審判決の取消しを求めて、更に上告していた事案である。

 最高裁は控訴審の判断は是認できないと指摘した上で、まず戸数要件の判定の対象となる共同住宅等は家屋に含まれるものと解釈。つまり、家屋とは屋根及び周壁等を有し、土地に定着した建造物であり、その目的の用途に供し得る状態にあるものをいい、別段の定めがない限り、1棟の建物を単位として把握されるべきであるという判断を示したわけだ。

 その結果、不動産取得税が減額される場合の共同住宅等の戸数要件も別段の定めがない限り、1棟の共同住宅等を単位とすべきであり、この点について別異に解すべきことを定めた規定はなく、複数棟の共同住宅等を合わせて戸数要件を判断することを前提とした規定も存在しないことに照らせば、1棟の共同住宅等ごとに判断すべきと判示して、法人側の請求を認容した控訴審判決を否定する逆転判決を言い渡した。

(2016.12.19最高裁第一小法廷判決、平成28年(行ヒ)第6号)