居住の用に供していると家屋とは認められないと認定、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/11/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 居住用財産の譲渡所得の特別控除制度の適用を巡り、譲渡した居住用財産が居住の用に供している家屋か否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠にしていたとは認められないことから、居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用は認められないと認定、審査請求を棄却した。

 この事件は、審査請求人が平成24年中に譲渡した土地の譲渡所得について居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35)を適用して確定申告をしたところ、原処分庁が居住用財産の譲渡所得の特別控除制度は適用できないと否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことから、請求人が原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり請求人側は、譲渡した土地上に存していた家屋が、租税特別措置法35条1項(居住用財産の譲渡所得の特別控除)が定める「居住の用に供している家屋」に該当する旨主張して、原処分の全部取消しを求めて審査請求したものだ。

 これに対して裁決は、1)家屋におけるガス及び水道の使用実績がなく、電気の使用量は極めて少ないこと、2)家屋の窓ガラスが割れたまま放置され、複数の近隣住民が人の住める建物ではなかったと評していること、3)請求人が住民票上の住所をその家屋とは別の借家の所在地に置いていたこと、4)借家に係る賃貸借契約及びその更新の際に、請求人が同居人として名を連ねていたこと、などを指摘した。

 これらのことからすれば、請求人が家屋を真に居住の意思を持って、客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていたとは認められないと認定した。その事実認定の結果、家屋が請求人の「居住の用に供している家屋」には該当しないことから、居住用財産の譲渡所得の特別控除制度の適用も認められないと判断、審査請求を斥けた。

(2016.03.16国税不服審判所裁決)