控訴審も金融機関等からの債務免除益を一時所得と判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/04/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 航空機のリース事業を終了する際に、航空機購入の原資となった借入金を金融機関から免除されたことに伴う経済的利益、業務執行者から手数料を免除されたことに伴う経済的利益の所得区分の判定が争われた事件で東京高裁(杉原則彦裁判長)は、労務その他の役務の対価としての性質を有するとはいえないとして原審判決を支持、国側の控訴を棄却した。

 この事件は、民法上の組合を組成した上、業務執行者に出資金や借入金で購入した航空機を航空会社に賃貸させる航空機リース事業に参加していた者らが、事業の清算の際に金融機関から受けたローン債務免除益、業務執行者から受けた手数料免除益を、原処分庁が雑所得又は一時所得と認定、更正処分等をしてきたのが発端。そこで納税者側が一時所得に該当すると主張して原処分の取消しを求めて提訴したところ、東京地裁が納税者側の主張を認容したため、課税庁側が判決の取消しを求めて控訴していたという事案である。

 控訴審も、金融機関からの借入金の債務免除に伴う債務免除益は、一時的、偶発的に発生したもので、営利を目的とした継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当し、組合員は債務免除された金融機関に対してその対価となるような具体的な労務その他の役務を提供していないことから、労務その他の役務の対価としての性質を有しているとはいえないと指摘して、一時所得に該当すると判断。

 また、リース事業を終了する際に業務執行者に支払うべき手数料が債務免除されたことによって得た経済的利益については、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されていたところ、その後に支払債務の免除を受けたことによって発生したものであり、経済的実質の点から手数料免除益を不動産所得に該当すると認めることは租税法律主義に反すると指摘した上で、手数料免除益は組合契約に基づいて当然に発生したものでも、予定されていたものでもなく、偶発的に発生したものであるから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当すると判示して、課税当局側の主張を斥ける判決を言い渡している。

(2016.02.17東京高裁判決、平成27年(行コ)第215号)