別件判決は更正の請求が認められる判決には該当しないと判示して棄却
カテゴリ:08.国税通則法 裁決・判例
作成日:08/23/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 別件判決の確定を理由にした更正の請求を巡り、国税通則法が定める更正の請求が認められる判決に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、別件判決は公正証書に基づく権利関係を訴訟物の対象として審理したものではないと判断して、納税者側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、別件の所得税の更正処分に対する取消請求訴訟の判決が勝訴確定したことを理由に、畜産業者が消費税等に係る更正の請求をしたのが発端。しかし原処分庁が更正をすべき理由がないとして斥けたため、原処分の全部取消しを求めて提訴したという事案である。

 別件の判決は、肉用牛の売却に伴う事業所得の免除特例を適用した確定申告が更正されたため、その取消しを求めて提訴したもので、畜産業者側の請求をほぼ認める判決が言い渡され、確定した。畜産業者側は判決の確定を受け、別件判決は肉用牛の譲受を認定判断したものであるから、国税通則法が定める「……計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」に該当すると主張して原処分の取消しを求めたわけだが、これに対して原処分庁側は、別件判決は免除特例の適用が受けられる肉用牛に該当するか否かを判断したもので、資産の権利関係の帰属が争われたものではないと反論して、取消請求の棄却を求めた。

 判決はまず、国税通則法23条の趣旨に触れた上で、同条2項が定める判決は少なくとも、課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実を審判の対象とする判決であることを要し、その事実が計算の基礎としたところと異なることが確定したとき、つまり当事者間の権利関係に変動が生じたといえる場合であることを要すると解釈。

 しかし別件判決は、訴訟物である課税処分の違法一般を審判したものであり、公正証書に基づく肉用牛の所有権の移転を認定したとしても、そのこと自体を審判の対象として、当事者間における事実関係を確定させたものとは言えないと判示。結局、更正の請求が認められる判決には該当しないという判断から、棄却した。

(2015.09.18東京地裁判決、平成26年(行ウ)第418号)