土地の造成費の経費性は工事の具体的な内容に従った判断が必要
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/22/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 賃貸用土地に行った造成工事費を、不動産所得の計算上、必要経費に算入できるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、造成工事等の工事の具体的な内容に従って判断すべきであると指摘した上で、費用の一部はその価値を増加させるものではなく改良費には当たらないと判断して必要経費算入を認め、原処分を一部取り消した。

 この事件は、審査請求人が不動産所得の計算上、土地の新たな貸付けに伴う土地上の建物の解体及び土地の造成等の費用の全額を必要経費に算入して確定申告をしたことが発端になったもので、この申告に対して原処分庁が、土地の造成工事等に係る費用は家事上の経費又は土地の取得費に算入すべきであるとして必要経費算入を否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、請求人側がその一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁側は、賃貸用土地に行われた造成等工事に係る費用の全てが改良費に該当し、土地の取得費に算入すべき性格のものであるから、不動産所得の計算上、必要経費には算入できないと主張して審査請求の棄却を求めた。

 裁決は、賃貸用土地の造成等の工事に係る費用が必要経費に算入されるか否かは、造成等の工事の具体的な内容に従って判断する必要があると指摘して、造成工事の具体的な内容を1)外構造成工事(掘削、埋戻し、整地等)、2)土留め工事(隣接地との境界ブロックの撤去及び積増し)、3)乗入側溝改修工事(土地に接する県道の歩道部分の切下げ、復旧等)、4)境界等整備(隣地との境界の明確化等)、5)土壌汚染調査(土壌内の有毒物質の有無の調査)に区分。

 その上で、外構造工事は土地の形質を変更し改良する工事のため改良費、土留め工事、境界等整備及び土壌汚染調査はいずれも土地の改良、価値の増加に繋がるものではないから改良費には該当せず、不動産所得の必要経費に算入されると判断。さらに、乗入側溝改修工事は所有する土地に係る工事ではないものの、工事によって便益を受け、その効果が費用の支出後1年以上に及ぶので繰延資産に該当し、償却費が必要経費に算入されると判断、原処分の一部取消しという裁決内容になった。

(2016.03.03国税不服審判所裁決)