法人の代表者に対する債権放棄は寄附金に該当すると裁決
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/08/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 個人事業を営む代表者に対する債権放棄に伴い、法人が雑損失として計上した金額が損金に算入されるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、回収不能とはいえない債権を放棄し、経済的価値を有する債権を対価なしに任意に処分したものであるから合理的な理由が存在しないと認定、寄附金に該当すると判断して棄却した。

 この事件は、個人事業を営む代表者が第三者から賃借した建物内に設置して貸し付けていた内装設備等をめぐり、病院開設に関する業務等を行う法人が建物の賃貸借契約の解除に伴ってその所有権を放棄したとして計上した固定資産除却損及び貸付けに対する債権放棄の額を雑損失等として申告したことが発端。これに対して原処分庁が、債権放棄の事実は認められないと否認して更正処分等をしてきたため、法人側がその一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 法人側は、代表者に有していた売掛金の放棄は、代表者が旧賃貸人から賃借していた建物に係る旧賃貸人による建物の明渡し等を求めた訴訟の和解に伴い、旧賃貸人が代表者に債権放棄している事実からも明らかなように、債権の回収可能性がなく、その金額は金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れの取扱いに沿うものであるから損金に算入することができる旨主張して、取消しを求めた。

 しかし裁決は、債権放棄の事業年度末前後の代表者の収入状況及び売掛金の回収状況を考慮すると、全額が回収不能とは認められない。また、債権放棄の事実は認められるものの、書面によって示される証拠がなく、書面によって明らかにされた債務免除額もないことから、法基通9-6-1(4)に掲げる事実に該当しない。さらに、同通達の(1)ないし(3)に掲げる事実に関する証拠はなく、その事実もないと指摘した。その認定の下、同通達が定める貸倒れの要件には該当せず、債権放棄に伴って計上した雑損失は貸倒損失として損金の額には算入されないと判断した。

 つまり、回収不能とはいえない債権を放棄し、対価を得ることなく経済的価値を有する債権を債権者が任意に処分したものであるから、その行為に合理的な理由が認められないため寄附金に該当すると判断、棄却したという事案だ。

(2016.02.28国税不服審判所裁決)