税務代理権を無視した行為はなかったと税理士の主張を棄却
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:06/21/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 顧問契約が打ち切られたのは、税理士の立会いのない税務調査が行われたためで税務代理権限を侵害されたと主張、税理士が国に損害賠償を求めた事件で、大阪高裁(井垣敏生裁判長)は原審と同様、税務職員らの行為に違法事由があったとまでは言えないと判断、棄却した。50人ほどの税理士が補佐人として参加、話題を集めた事件だが、裁判官が税理士の立場に理解を示しながらも、結果的には一蹴された判決内容に不満も多いようだ。

 この事件は、顧問先が遠隔地にあったことがそもそもの発端。そこで、税務調査の延期を申し入れ、後日、税理士の立会いの下に税務調査が行われた際に調査理由の開示を求めたためか、途中で調査が打ち切られるというトラブルが根っこにあった。

 ところが、その後も税理士不在の状態で臨場調査が繰り返され、最終的には青色申告承認の取消し、消費税の仕入税額控除否認と過少申告加算税の賦課決定処分が打たれ、挙げ句に税理士は顧問先から税務代理に関する委任契約を解除されたことから、国側に顧問契約の解除に伴う損害賠償責任を求めて提訴したものの、一審の神戸地裁が棄却したため控訴していたという事案だ。税理士側は、無予告調査の違法性、税務代理権の侵害を一貫して主張していた。

 これに対して控訴審は、税理士の主張に理解を示しながらも、税理士の立会いを排除しようとしたような事実は認められないと認定。その結果、税理士の税務代理権を無視、軽視するような態度があったことを理由に、税務署員らの行為を違法視することは困難であると指摘した上で、税務委任契約の解除による損害賠償責任も負わないと判示した。

 こうしたケースでは税理士の主張が認められるのはレアケースともいえる。それだけに、納税者や税理士との信頼感を損ねるような対応を厳に慎むことが税務署員には望まれよう。

(2005.03.29大阪高裁判決、平成16年(ネ)第1049号)