高裁も税理士の主張を認容、保険金の支払いを命じる判決
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:05/22/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 収用に絡む課税特例の適用誤りから依頼者に損害賠償金を支払った税理士が、保険会社に税理士職業賠償保険による補填を求めた事件で、東京高裁(江見弘武裁判長)は請求額を一部縮減したものの、原審同様、税理士の保険金請求を全面的に認容する判決を下した。

 この事件は、土地収用法に基づいて国に土地を売却した代理人らの譲渡所得税の申告手続きをした際、収用等に伴って代替資産を取得した場合の課税特例(措置法33条)の解釈を誤り、依頼者らに有利な措置法33条の4の特別控除制度を選択しないで手続きしたことが発端になったもの。

 その結果、解釈を誤らなければ負担する必要のなかった過少申告加算税、延滞税相当額、市民税・県民税相当額を損害賠償金として依頼者に支払った上で、税賠保険契約に基づいて譲渡所得税本税、市民税・県民税に係る差額分、遅延損害金を保険会社に求めたところ、保険会社側が免責事由を理由に支払いを拒んだため税理士が提訴したという事案だ。

 これに対して一審が税理士の請求を認容して保険金と遅延損害金の支払いを保険会社に命じる判決を下したため、保険会社側が控訴していたわけだ。

 控訴審はまず、税賠保険は過大納付による損害の他、課税特例を適用しなかったことによる損害も保険の対象になることを前提に創設されていると解釈して、申告が過少申告となっていない限り、その損害が保険の対象となる損害になることに異議はないと示唆。この過少申告を免責とした趣旨・目的に照らせば、依頼者の損害が税理士の税制選択上の過誤により生じたものである時は、形式的に過少申告があったとしても免責条項の適用はないと解釈するのが相当であると判示して、請求額を一部縮減したものの、税理士の保険金請求を全面的に認容する判決を下している。

(2006.12.20 東京高裁判決、平成18年(ネ)第4355号)