納税猶予税額は免責条項の本来納付すべき税額と判示
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:09/07/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 いわゆる税賠保険に加入している税理士が顧客に負担した損害賠償金相当額の支払いを保険会社に求めていた事件で、東京地裁(市川頼明裁判長)は本来納付すべき税額に相当する金額は税賠保険の免責条項にあたると判示、税理士の支払請求を棄却した。
 この訴訟は、税賠保険に加入している税理士が相続税の納税猶予のための農地特定転用承認申請手続きを失念したことに伴って、顧客に2800万円にのぼる損害賠償金を負担したことから、税賠保険契約に基づく保険金の支払いを求めていたという事案。通常、税賠保険には本来納付すべき税額に相当する金額については免責条項が付されている。そこで保険会社は、相続税額は申告時に確定しており、一定要件のもとにその税額が猶予されていたにすぎないと反論。免責条項に該当するとして支払いを拒否していたわけだ。
 つまり、相続税の納税猶予が継続適用される農地特定転用承認申請手続きを失念したことに伴って顧客が納付しなければならなくなった相続税額は、本来納付すべき税額にあたるのか否かが争点になっていた。
 これに対して、東京地裁は税賠保険の免責条項、相続税の納税猶予制度及び農地の特定転用の場合の納税猶予制度の継続制度の趣旨や内容を説明した上で、税理士の顧客が納税猶予を受けていた相続税額は本来納付すべき税額に該当すると指摘。同時に、免責条項に盛り込まれた本来納付すべき税額に相当する金額を、税理士が被害者に行う支払いにも該当すると判示して、税理士の支払請求を斥けている。
(1998.4.30東京地裁判決、平成8年(ワ)第12097号保険金請求事件)