税の専門家であり法律の専門家でないと判示、税賠請求を棄却
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:02/28/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 税理士が相続財産の調査をすべき義務、また過大な相続税を納税する危険の説明義務を怠ったとして、納税者から総額2500万円余の損害賠償を請求された事件で、那覇地裁(下和弘裁判長)は、税理士は税の専門家であっても法律の専門家ではないから、所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまではいえないと判示して税理士の調査義務違反、説明義務違反を否定、納税者である相続人らの税理士に対する損害賠償請求を棄却した。

 この事件は、相続税の申告を請け負った税理士が相続財産を調査すべき義務を怠り、過大な相続税を納税するリスクを説明すべき義務を怠った結果、相続していない土地まで相続税を納付する損害を被ったと相続人である納税者が主張、総額で2500万円余の損害賠償を求めて提訴していた事案である。

 相続人らは、税理士は税の専門家であるから、税務処理の際には高度な注意義務を負い、相続税の計算の際には相続財産の範囲を調査確認して、過大な相続税を支払うことがないようにすべきであると主張。また、相続していない土地に係る相続税の納付に関しても、調査義務を果たさず、被相続人が単独相続したことを前提に申告書を作成して過剰な相続税を支払うよう指示しており、その点にも過失があると指摘していた。

 これに対して判決は、関係証拠の作成日から、申告の際に、税理士は土地の登記簿謄本及び固定資産評価証明書を調査していたと認定。というのも、申告書作成の前に相続人らに聞取りを行って希望等を確認している事実などから、税理士は土地の利用状況を調査していたことが認められたからだ。さらに、税理士は税務の専門家であっても法律の専門家ではないと判示した上で、相続税の税務処理の際に所有権の移転原因を厳密に調査する義務があるとまではいえないと指摘して、相続人の請求を棄却している。

(2011.10.19那覇地裁判決、平成22年(ワ)第106号)