親会社への値引等による売上減少分は寄附金には該当しないと判示
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:09/02/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 子会社の親会社に対する製品の売上値引及び単価変更による売上の減額が寄附金に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(谷口豊裁判長)は、売上値引及び単価変更が経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡又は利益の供与がされたとは認められないから、寄附金には該当しなと判断、原処分を全部取り消す旨の判決を言い渡した。

 この事件は、グループ法人の子会社が製品の売上値引及び単価変更によって親会社に対する売上が減額したことに対して、原処分庁が法人税法37条の寄附金に該当すると認定、法人税の更正処分及び過少申告加算税又は重加算税の賦課決定処分をしてきたため、子会社側がその全部取消しを求めて提訴したというもの。つまり、売上値引や単価変更に伴う金額相当分が寄附金に該当するか否かが争点になった事案である。

 原処分庁側は、売上値引や単価変更は第三者間の通常の経済取引として是認できる合理的理由がないのに、既に販売契約に基づいて発生していた債権を放棄し、又は販売契約によって定まっていた取引価格を変更してものであるから、経済的にみて贈与と同視し得る利益の供与があったと主張した。

 しかし判決は、販売契約等の事実関係を検討の上、親会社と子会社が協議の上決定した販売契約の契約価格は、各半期における期末決定価格又は期中決定価格であると認定。その上で、販売契約において合意された契約価格を当初取引価格と認定した上で、その後に債権放棄又は取引価格変更の合意があったと認めるべきという原処分庁側の主張は、真実の法律関係から離れて法律関係を構成するものであり、採用することはできないと斥けた。

 結局、売上値引及び単価変更によって、子会社から親会社に経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡又は利益の供与がされたとは認められないことから法人税37条7項が定める寄附金には該当しないと指摘して、課税当局側の主張を悉く斥けている。

(2014.01.24東京地裁判決、平成20年(行ウ)第738号)