税理士には5000万円余の損害賠償義務があると判示
カテゴリ:05.相続・贈与税, 13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:08/28/2001  提供元:21C・TFフォーラム



 小規模宅地等の評価減特例の適用を誤ったために生じた損害は、申告業務を請け負った税理士の注意義務違反によるためと主張、税理士に損害賠償を求めていた事件で東京高裁(石川善則裁判長)は、一般的な税理士として何らかの注意義務違反があったとは言えないと判示して控訴を棄却したが、控訴審で追加された予備的請求については税理士に注意義務違反があると認定、5000万円余の損害賠償金の支払いを命じる判決を下した。
 この事件は、相続税の申告を依頼された税理士が、課税価格の計算上不利になる評価額の低い土地に小規模宅地等の評価減特例を適用して申告したことが発端。評価額の高い土地は事業性に乏しく、特例の要件を満たしていないという判断が働いたためだ。そこで納税者が、税理士の判断は注意義務違反と批判、損害賠償請求訴訟を起こしたものの、一審が納税者の請求をいずれも棄却したため控訴していた事案だ。納税者は、控訴審でも貸しスタジオが事業に該当し、小規模宅地等の評価減特例の適用は可能と主張。また、予備的請求では、貸しスタジオ業の事業該当性を追加主張して、税理士側に過誤判断があったと強く批判、同特例を適用しなかったことに伴う損害の賠償を新たに求めた。
 これに対して判決は、原審からの主意的請求部分については、税理士として一般的な注意義務違反はなかったと原審の判断を支持して控訴を棄却。しかし、控訴審で追加された予備的請求部分については、同特例の適用をめぐる選択肢の説明を直接の委任者に行わなかった点には注意義務違反があったと認定、その判断誤りの範囲において損害賠償義務が生じると判示、税理士に5000万円余の損害賠償金の支払いを命じている。
 (2001.07.11東京高裁判決、平成11年(ネ)第5850号)