控訴審は再び社会福祉法人の理事長の横領は給与と判示
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:05/11/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 社会福祉法人の元理事長の横領に対する賞与認定、社会福祉法人に対する源泉所得税の納税告知処分さらに不納付加算税賦課決定処分の可否が争われていた事件で仙台高裁(小野貞夫裁判長)は、給与とは認めがたいと判示して社会福祉法人の主張を認容した青森地裁判決を否定、原処分を適法とする逆転判決を言い渡した。昨年8月の大阪高裁も同様の判断をしており、原審の京都地裁、青森地裁が認めた社会福祉法人の主張が否定されたことで、10数件を超えるといわれる類似事件の争いもその方向性が固まったといえそうだ。

 原審の青森地裁は、元理事長の所得であることは明らかでも、そのことだけで社会福祉法人から給与所得、つまり賞与の支払いがあったとは必ずしもいえないと示唆して社会福祉法人に対する源泉所得税の納税告知処分は不当と判断、社会福祉法人の主張を全面的に認容する判決を言い渡した。そこで、原審の判決の取消しを求めて国側か控訴していたという事案だ。

 控訴審で国側は、給与所得か否かは形式的観点のみでなく実質的に判断する必要があると主張した上で、理事長のような権限のある者が自己の権限を濫用して、法人の事業活動を通じて得た利益は、特段の事情がない限り、実質的に法人代表者が受けた給与であると推認することを妨げないと反論を展開、原審判決の取消しを求めた。

 これに対して仙台高裁も、法人代表者が経営の実権を掌握し、実質的に支配している場合に、自己の権限を濫用して法人の事業活動から得た利益は、給与所得の外形を有していない場合でも、特段の事情がない限り、代表者の地位・権限に対して受けた給与と推認することが認められることから、原処分はいずれも妥当と判示、納税者敗訴の逆転判決を下した。給与と推認することが許される、認められるという言い回しになったのも、今後、類似の事件が出てくると、課税の公平性が損なわれるという判断が働いたためであろう。

(2004..03.12 仙台高裁判決、平成15年(行コ)第15号)